脱炭素経営は、企業が脱炭素化を目指し、CO2排出量を実質ゼロにする取り組みを行うことで地球温暖化の抑制や環境問題への対応が求められる現代において、ますます重要視されている経営戦略です。本記事では、脱炭素経営の意義とその取り組み方法、日本での具体的な事例、メリット・デメリットや今後の展望について詳しく解説します。
脱炭素経営の取り組み方
脱炭素経営にはいくつかの枠組みや取り組み方があり、その中でも代表的なものにTCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures)、SBT (Science Based Targets)、RE100 (Renewable Electricity 100%) が挙げられます。これらの取り組みを通じて企業は、温室効果ガスの削減をはかりながら持続可能な経営を実現していくことが求められています。
TCFD
TCFDは、企業が気候変動リスク（物理的リスクや遷移リスク）とそれに関連した財務情報を開示することを推進する国際的な枠組みです。これにより、投資家やステークホルダーに対して企業の気候変動リスク管理状況を的確かつ透明に伝えることができます。
TCFDに賛同する企業は、経済の脱炭素化を実現するための戦略や目標を明確にし、その達成過程について四分類（ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標）に沿って開示することが求められます。賛同企業数は世界的に増加傾向にあり、日本企業も積極的に取り組んでいます。
SBT
SBTは、企業の温室効果ガス削減目標を科学的根拠に基づいて設定し、その達成過程を経済活動全体で評価するための国際的なイニシアチブです。企業は自社の目標をSBDi (Science Based Targets initiative) に申請し、承認された目標を達成することにより持続可能な経済成長に貢献します。
SBTに認定されることで、企業は自己啓発し続ける姿勢を見せることができ、ESG投資に対しても好影響を与えると考えられます。日本企業も国内外の問題を解決するために積極的に取り組む姿勢を見せています。
RE100
RE100は、企業の事業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブです。参加企業は自社で再生可能エネルギーを導入するか、再生可能エネルギー証書（I-REC、GOなど）を購入することで目標を達成します。
RE100に参加することで、企業は自らの環境負荷を低減し、持続可能な経営を目指す姿勢を示すことができ、顧客や投資家からも高評価されることが期待できます。日本でも多くの企業がRE100に参加し、取り組みを進めております。
日本の脱炭素経営の現状と事例
日本では、政府が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げており、多くの企業がこの目標に対応すべく脱炭素経営に取り組んでいます。特に、アシックスや塩野義製薬のような大手企業がリーディングカンパニーとして活躍しており、その取り組みが注目されています。
アシックスの脱炭素経営
アシックスは、脱炭素ビジョンの一環として、「アシックス2050カーボンビジョン」として、2050年までに事業活動に伴う温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げています。また、アシックスはRE100に参加し、事業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指しています。
具体的な取り組みとしては、自社製品の素材や生産プロセスを見直すことで環境負荷を低減するだけでなく、自社施設の省エネルギー化や太陽光発電の導入など、施設面でも脱炭素化への努力を行っています。
塩野義製薬の脱炭素経営
塩野義製薬は、SDGs（持続可能な開発目標）やESG（環境、社会、企業統治）に関連する課題に取り組むことを企業経営の重要な方針として掲げており、環境面では脱炭素経営に力を入れています。塩野義製薬はTCFDに賛同し、気候変動リスクやそれに関連する財務情報の開示に努めています。
具体的な取り組みとしては、自社本社ビルにおいて太陽光発電システムを導入し、事業活動による環境負荷を軽減しています。また、2025年までに自社の温室効果ガス排出量を2015年比で20%削減する目標を設定し、その達成へ向けた取り組みを行っています。
脱炭素経営のメリット・デメリット
脱炭素経営には、企業イメージの向上や金融機関からの融資の受けやすさが増すなどのメリットがありますが、一方で初期投資や維持費が大きいことや、取引先との関係見直しが必要な場合もあるデメリットがあります。このセクションでは、両面を詳しく解説します。
メリット
脱炭素経営の最大のメリットは、企業イメージの向上です。環境問題への対応や気候変動リスク対策が求められる現代において、脱炭素経営を行うことで企業の社会的責任を果たす姿勢をアピールでき、顧客や消費者から好評価を得ることができます。
また、ESG投資が増えている中で、脱炭素経営を行っている企業は投資家からも評価が高まり、資金調達や株価支持が得られやすくなります。政府からの補助金や支援も受けられるため、事業展開や成長にもつながります。
デメリット
一方で、脱炭素経営には初期投資や維持費が大きいというデメリットがあります。エネルギー効率の高い設備を導入する際には、そのコストが嵩んでしまうことが多く、コスト負担が企業にとって大きな課題となります。
さらに、脱炭素経営に取り組むことで取引先との関係が変化することがあります。例えば、環境負荷の高い取引先を見直すことが求められる場合があり、そのプロセスで従来の取引関係が損なわれる可能性もあります。
脱炭素経営の今後の展望
脱炭素経営は、今後も注目度が高まるとともに、国内外からの要請や支援が強化されることが予想されます。また、再エネ導入企業の増加に伴い市場規模が拡大し、コストダウンが促されることで、脱炭素経営がより多くの企業にとって手の届く取り組みになっていく可能性があります。
一方で、炭素税の導入が検討されている中で、脱炭素経営に取り組まない企業は法律や税金の面で不利になるリスクも増えてきています。これらのリスクを回避し、持続可能な経営を実現するために、企業は環境を考慮した施策や戦略を継続的に見直し、改善していくことが求められます。
また、脱炭素経営が企業の競争力向上にも寄与すると考えられ、求職者や人材の獲得にも効果が期待できます。環境意識の高い人材を惹きつけ、定着させることができれば、企業の成長にも繋がると言えるでしょう。
まとめ
脱炭素経営は、地球温暖化や環境問題への対応が求められる現代においてますます重要視されており、企業はTCFD、SBT、RE100などの国際的な枠組みを活用しながら取り組んでいます。日本企業も積極的に脱炭素経営に取り組み、具体的な事例が増えている中、今後はコストダウンや政府支援によってさらなる普及が期待されます。一方で、脱炭素経営には初期投資や維持費のデメリットがあり、企業にとって課題も残ります。それでも、脱炭素経営が企業イメージの向上や投資家からの評価に繋がることを考慮すれば、経営戦略としてその重要性は増していくことでしょう。
よくある質問
Q1.脱炭素経営とは何ですか？
A1.脱炭素経営とは、企業がCO2排出量を実質ゼロにする取り組みを行う経営戦略のことです。地球温暖化の抑制や環境問題への対応が求められる現代において、ますます重要視されています。
Q2.脱炭素経営の具体的な取り組み方法はありますか？
A2.脱炭素経営にはいくつかの枠組みや取り組み方があります。代表的なものには、TCFD（気候変動財務情報開示タスクフォース）、SBT（科学的根拠に基づく目標）、RE100（再生可能エネルギー100%）があります。
Q3. 脱炭素経営のメリットは何ですか？
A3. 脱炭素経営の最大のメリットは、企業イメージの向上です。また、ESG投資が増えている中で、脱炭素経営を行っている企業は投資家からも評価が高まり、資金調達や株価支持が得られやすくなります。
Q4. 脱炭素経営にはどのようなデメリットがありますか？
A4.脱炭素経営には初期投資や維持費が大きいというデメリットがあります。また、取引先との関係見直しや従業員教育の必要性など、企業にとって課題が生じる場合もあります。
